≪ シリーズ ★旅は、ここからゆっくりになる。第3話 ≫

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予定のない道ほど、旅らしい。


その朝は、いつもより少しだけ時間にも気持ちにも余裕がありました。


温泉に浸かり、庭園を歩いてからホテルを出る。


今日の行き先は決めていたはずなのに、不思議と急ぐ気持ちはありませんでした。


歩いていると、少し気になる坂道がありました。


地図に印をつけていた場所ではありません。


ただ、坂の向こうに見える街並みが、少し気になっただけ。


─ 函館には、まっすぐ通り過ぎるには惜しい風景があります。 ─


坂の先に見える海。


古い建物の窓。


大きな通りから一本外れた、静かな道。


「この先には、何があるのだろう」


そんな小さな気持ちに任せて、坂を下ってみることにしました。


やがて視界がひらき、海が見えてきました。


そこにあったのは、船と岸壁、その向こうに街と山が続く、静かな漁港の景色。


海から届く風には、かすかに潮の香りがありました。


何か特別なことをするわけではありません。


ただ、海まで来てみる。


それだけで、今日の旅が少し自分のものになる気がしました。


寄り道は、時間が余ったからできるものではなく、

心に少し余白があるから選べるものなのかもしれません。


予定どおりに訪れた場所も、もちろん旅の思い出です。


けれど、あとからふと思い出すのは、曲がってみた道や、坂を下りた先で感じた海風だったりします。


気になる道を見つけたら、少しだけ歩いてみる。


その先に何があるか分からないことも、旅の楽しさなのだと思います。


思い出すのは、予定になかった景色かもしれません。


─ 旅は、ここからゆっくりになる。─

KKRはこだてスタッフが綴る、新しい函館旅のエッセイ。



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